平成29年度川崎市学校事務研究大会
1月19日(金)川崎市中原市民館において平成29年度川崎市学校事務研究大会が開催されました。午前は開会式に続いて講演、研究部の研究発表があり、午後は多摩区、川崎区、中原区の順番で研究発表がありました。
残念ながらすべてについて紹介することはできませんが、研究部および2地区の発表内容について概要をまとめました。

<研究部>
「スクール・コンプライアンス~学校事務職員の視点から~」
コンプライアンスという言葉が一般的に意味するものは「法令遵守」であるが、そこからもっと能動的、広義的に捉え、「法令遵守」を基盤として社会的要請、さらに価値提供について研究し、ステークホルダーに対して学校は何ができるかを学校事務職員の視点から考えてきた。平成27年度の研究大会では中間報告という形で「スクール・コンプライアンス」の定義を伝え、今回は主に定義内における「価値提供」について報告する。
まず「価値提供」とは具体的にどのようなものか。「スクール・コンプライアンス」の定義を基に、下から「法令に基づく業務」「社会の要請に基づく業務」「自らの発想に基づく業務」の三層に分類し、それらを貫く縦棒が「価値提供」と考えた。「価値提供」はすべての層に内在し、業務の工夫・改善をすることで各層は厚みを増していく。上の層ほど業務自体による価値提供が大きくなるが、業務の工夫・改善次第で層の高さに関係なく価値を高めることができる。
このように「スクール・コンプライアンスの概念を前提に、現状から更に一歩踏み込んで自発的に学校運営に参画する業務、またその姿勢」を研究部が考える「価値提供」と定義し、取り組んだ実践例を挙げる。
・使用する記憶媒体の統一およびAV機器の選定、NASの導入
・防災ヘルメットを買い替える際に教職員とすぐ判別できる物品選定の提案
・業者への支払時期を迅速に行うための学校徴収金振替額の変更
・振替手数料の発生に伴う学校徴収金取扱金融機関の変更
・学校重点目標に基づく児童用ベンチの設置
・具体的取り組みの積み重ねによる防災関連部会での中心的役割の獲得
これらは一例であり、学校によって「価値提供」の内容は異なる。「スクール・コンプライアンス」という視点には、個人個人の意識を外側へ向けることで組織全体の仕事の質を変える可能性があると考える。学校をよりよくするために自分は何ができるのか、さまざまな職種の職員と積極的に関わりながら学校の現状や課題を把握し、改善策を考えていくことが大切である。
<川崎区>
「教育課程と教材整備」
教育課程とは各教科などの目標を実現するように組織した計画であるということから、まずは各学校で作成している学校運営計画を持ち寄り、傾向などを調べることから始めた。
保健体育の学校運営計画では、教育課程の実施時期が若干違ったものの内容はほとんど同じであり、学校独自の教育課程は見られなかった。
続いて保健体育の教育課程を修了するにあたって必要な教材を調べるため、文部科学省が提示する「教材整備指針」を確認した。教材整備指針とは、学習指導要領に基づいて教科・機能別に教材を分類し、クラス数、クラス人数により基準数を定めているものである。そこで、各学校で保有している保健体育および音楽の物品を調査し、教材整備基準と比べてみることにした。小中学校ともに授業で必要な分類は比較的基準数を満たしており、授業で必要な分類以外にも小学校では遊具として保有していたり、あるいは中学校で選択制の種目のうち、実施していないものは保有数がゼロとなっているという特徴が見られた。音楽に関しては弦楽器や管楽器など基準数が明らかになっていないものが多く、授業では使用しない備品もあるため、教材整備指針を参考にすることは難しいと判断した。
これらのデータの活用方法として、予算委員会で教材整備指針の基準数を提示することを検討した。その場合に想定されることとして「実際には必要ないものを買うことになる」「過剰に物品購入の希望が出てくる」等の不都合が考えられる。そこで、備品購入希望を募る際の資料として配付したが、教材整備指針より不足している備品についても積極的に購入するという意見があまりなかった。理由を確認すると、不足備品について緊急性や必要性を感じていないためであった。実際に予算委員会で購入決定したものは、教材整備指針と比較して不足している備品とは異なるものが大半であった。
この不一致の一因として、教材整備指針が全国の幅広い活動に対応するため、多種多様な物品を盛り込んでいる実情がある。学校は一校ごとに異なるカリキュラムを持っているため、すべて揃えるのではなく、学校ごとにあった形で教材整備指針を利用することがより良い使い方となる。「本当に欲しいもの」と「教材整備指針の基準」のバランスを取りながら活用していくことが望ましい。
(担当:山川)
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